2018/11/09 12:21
モールスキンとはモグラの毛皮の意味で、古いフランスのワークパンツやジャケットに使われてきた素材なのですが、写真から分かるとおりスウェードのような質感があり独特の光沢と打ち込みの強い分厚い生地が昔から好きで、最近特に愛用しています。
モールスキンは元々が労働者の着る作業着、アメリカでいうデニムジーンズや、デニムジャケットのようなものなので、使われている素材はコットン100%、汚れれば何も考えずに洗濯機にかけて洗えること、ラフに扱える素材であることも魅力の一つです。
また、フランスの古いモールスキンと言えば、インクブルーと呼ばれるネイビーが主流だけど、こちらは少し珍しい黒色。少しだけ珍しいというのもお気に入りの理由の一つです。
私は以前ヨーロッパ古着のお店で、色が抜け落ち、すり切れてボロボロだけど、持ち主の手によって当て布等で丁寧に補修されたフランスの古いモールスキンジャケットを見たことがあり、こんなになるまで着て貰えたらこのワークジャケットを作った人も本望だろうなと思った記憶があります。
昨今、日本の東北地方の古い野良着が「boro」=アートピースとして注目を集めています。「boro」とは、150年以上前の東北地方に住む庶民が、木綿の服が破れれば、麻布を使って刺し子(刺しゅう)で補強し、生地がすり減り、穴が開いたらまたハギレでツギハギをして長く愛用していた衣類等のことで、計算されてないステッチや使い込まれた布の風合いがとても魅力的なものです。
物をボロボロになっても使う理由には、当然経済的な理由もありますが、そうでない理由も多くあると思います。私自身、お客様が愛用してくださるような物が作れるよう日々試行錯誤していきたいです。